美しい日本語の世界にひたる散文集【今日のセレクト本vol.71】

江國香織さんをご存知ですか?「東京タワー」「間宮兄弟」など、ドラマや映画化された作品も多数ある作家さんです。私は江國さんが大好きなのですが、新刊『物語のなかとそと 江國香織散文集』が最高だったので、紹介したいと思います。魅力やおすすめポイントをまとめました。

江國香織さんの『物語のなかとそと』

こちらはこの20年の短い小説と、エッセイが集められた、散文集です。あの小説の裏側はこうなっていたんだ!とか、江國香織さんってこういう人だったのね。ということがたくさん発見がありました。大好きな小説の一つに「金米糖の降るところ」がありますが、これも苦労して書かれた様子が描かれていて、なんとも愛おしい気持ちになりました。

日本語が美しいのが何よりの魅力

江國さんの言葉選びは本当に素敵で、一つ一つの言葉を読みこぼさないように、じっくりと読みました。いつもの3倍ほどの時間をかけて、じっくりと。それでもわからない言葉もあって、

  • かまびすしい(やかましい、という意)
  • 種なしピオーネ(大きめのぶどうの品種)

がわたしの辞書のなかに増えました。普段使っている日本語も、こんな風に洗練して使いたい、と大切に思ってしまいました。

わたしの心を代弁してくれているんではないか、という錯覚

初めて江國香織さんの小説「神様のボート」を読んだのが、大学生の時。それ以来、わたしの中では、江國香織さんが神格化してしまいました。わたしの心を代弁してくれているような、主人公がわたしかと錯覚するような、こんなこと言うのも恐れ多いけど、似た感覚を持っているのではないかと思ってしまう瞬間が何度もあるからです。誰かの中に無意識に健在している疑問や思いを、言葉にしてくれているのかな、とも考えてしました。

エッセイの中で衝撃的だった考え方や生活

今回はせっかくなので、私が逆に「こんなこと考えたことない!」と衝撃を受けたものをいくつかご紹介したいと思います。あくまで江國さんは淡々と、冷静に、綴っていますのでその世界観も伝わればいいなと思います^^

本の世界に生きるということ

本をたくさん読むのはわたしも同じなのですが、この感覚は持っていなかった!

昼間の時間の八割は本を読んでいるか書いているかで、家事その他、現実に対処する時間はたぶん二割。そのくらいだと思います。例えばこの二十年間、わたしが二割しか現実を生きていなかったとすると、二十年の二割は四年ですから、たった四年しか現実を生きていない計算になります。たった四年しか生きていないのに二十年も年を取ってしまったわけで、これもう、驚くなという方が無理な話です。(P.135)

逆に言えば、物語に没頭しているときは、現実に生きていないから、気をつけないといけないなと思いました。確かに、「家で何しているの?」と聞かれて「何してるんだろう・・・」と困ってしまったことがよくありました。でもよく考えたら本を読んでいるんですよね。この本を読んでいる時間が遥かに長いから、現実を生きていなかったということになります。

火葬場で褒められたい願望

これはなかなかわたしの発想にはなかったのですが、江國さんは火葬場で骨を壺に納めてくれる人に褒められたいのだそうです。

贅沢なかただったんですね。ええ、お骨を見ればわかります。(中略)尋常ではない量の果物を召し上がったんですね。メロン、西瓜、桃、ぶどう、梨。お骨の一つ一つがみずみずしい。こんなにつやつやしているということは、いいお酒をのまれてきたんですね。(中略)私、もう長いことこの仕事をしておりますが、こんなに幸福そうなお骨は見たことがありません(P.192)

だから今日も、全力で美味しいものを食べるんですって。私もたくさん美味しいものを食べたくなってしまいました。自分の魂が抜けて、骨だけになったところを想像するって、つるんとした気分になれて意外に清々しいものです。

こんな風に江國さんの日常や、考えていることの詰まった一冊でした。エッセイって人柄が出ると思いますが、江國さんはそれでも謎に包まれていることがあるから、人を惹きつけるのではないかと思います。わたしもまたハマってしまいました♡

まとめ:ゆっくりと落ち着いた空間で味わって

江國さんの魅力はまだまだまだまだまだまだ、わたしなんかじゃ届かないんだってことを、読めば読むほど感じます。どうしてなのかわからないけれど、孤高の存在のイメージ。いつか近づけるように、わたしも自分の道を頑張りたいと思いました。ぜひゆったりと、どんと構えて、この本を味わってみてくださいね。

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投稿者:

misato

管理人のみさとです。フリーランスのヨガインストラクターでライターをしているアラサー。年間150冊ほど本を読む読書好き、20代には女ひとりで世界一周をしました。会社員時代は激務すぎて3ヶ月で15キロ痩せた経験があります。 だからこそ、アラサー女子には息抜きが必要♡好きなことをいっぱい詰めたコンテンツをご紹介しています!

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