ほっこり親子の物語・漁港の肉子ちゃん【今日のセレクト本vol.45】

日本テレビの「行列のできる法律相談所」(2020年6月14日放送)で、MCの明石家さんまさんが「漁港の肉子ちゃん」の映画アニメ化をプロデュースすると話して話題になりました。芥川賞作家の又吉直樹さんも絶賛していることでも有名です。

こちらの記事では、西加奈子さんの「漁港の肉子ちゃん」を特集しました。ネタバレしないあらすじ、感想・魅力を解説します。親子愛を感じたい人におすすめです。

漁港の肉子ちゃん のあらすじ

「漁港の肉子ちゃん」は、漁港の小さな町が舞台です。肉子ちゃんは、焼肉屋さんで働いていて太っているからという理由で「肉子ちゃん」とあだ名がつけられた38歳のお母さん。(なんて残酷な相性)

娘は「似てない」とよく言われるほどスタイルが良くてかわいい小学5年生の「キクりん」。漁港の小さな町で働く肉子ちゃんは、明るくてみんなに愛されています。キクりんの視点で描かれている、漁港の町での親子の物語です。

ちなみに肉子ちゃんは、実際に焼肉屋さんで働く肉子ちゃんそっくりなおかみさんのモデルがいるのだそう。表紙も印象的ですよね。

漁港の肉子ちゃんの感想・魅力

漁港の肉子ちゃんの感想や魅力をまとめると、以下の4つです。

①肉子ちゃんをはじめキャラが濃すぎる
②明るすぎる肉子ちゃん
③冷静すぎるキクりん
④あとがきにジーン

それぞれを解説していきます。

①肉子ちゃんをはじめキャラが濃すぎる

1つ目は、肉子ちゃんをはじめキャラが濃すぎること。その中でも肉子ちゃんと、娘のキクりんは群を抜いて特別です。

②明るすぎる肉子ちゃん

肉子ちゃんは、男に騙されて、各地を転々としてきました。大阪、名古屋、横浜、東京、そして北の町の漁港にたどり着きました。借金を背負わされたり、騙されたりしているのに、キャラが明るすぎて苦労なんて微塵も感じさせません!

③冷静すぎるキクりん

そして娘のキクりんの冷静さも、肉子ちゃんとギャップがあって味がありました。吹き出してしまった面白いシーンを一つ抜粋。ちなみに肉子ちゃん・キクりん親子の苗字は見須子(ミスジ)と言います。

「苗字の見須子とかけまして、肉のミスジとときますっ!」

肉子ちゃんは、つまらないことを叫んでいる。頼むから続きを言わないでくれ、と祈っていたら、

「その心は、おんなじ名前っ!」

と叫んだ。私がもう少し大きかったら、殴っていたかもしれなかった。(P.243)

キクりんが小学5年生なのにこのツッコミ。名言のようでウケます。そして三つ子のおじいさんの幽霊が見えたり、世界とおしゃべりをしているのも不思議すぎて釘付けになりました。

④あとがきにジーン

面白くて一気読みだったけれど、あとがきを読んでさらにジーンときます。人と人のご縁は色々な形があるけれど、小説を介した出会いもあるものだなと感じてジーンとしてしまいました。結末は言いませんが、物語を読み終わったら、ぜひあとがきも読んでみてくださいね。

漁港の肉子ちゃんがさんまさんプロデュースで映画アニメ化?

漁港の肉子ちゃんは、2020年6月14日放送の日本テレビの「行列のできる法律相談所」(2020年6月14日放送)で、MCの明石家さんまさんが映画アニメ化をプロデュースすると話して話題になっています。

芥川賞作家の又吉直樹さんも絶賛していることでも注目されているので、ぜひ原作も読んでおきたいところです。ちなみにアニメの声優さんもまだ決まっていないようで、公開日も主題歌も未定。これから楽しみですね!

漁港の肉子ちゃんのまとめ

漁港の肉子ちゃんは、これまで読んできた西さんの作品の中でもとくに好きな作品。人間関係に疲れてしまったときや、親子愛にほっこりしたいときにおすすめです。

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大阪の魅力たっぷり西加奈子さんの小説「通天閣」【今日のセレクト本vol.35】

大阪の魅力全開の小説が、西加奈子さんの「通天閣」です。「大阪をなめたらあかんで!!」と言われているような気持ちになりました。

こちらの記事では、大阪の空気がたっぷり詰まった西加奈子さんの『通天閣』をご紹介します。ネタバレしないあらすじと感想・本の魅力を解説します。

通天閣のネタバレなしのあらすじ

「通天閣」の舞台は、通天閣のふもと、大阪ミナミ。主人公は恋人マメがニューヨークに行っちゃった私(雪ちゃん)と、工場に勤めている俺の2人です。

「私」は一途な女の子

恋人のマメが急にニューヨークに行ってからというもの、私は置いていかれてしまいます。でも一途にマメのことを思って待つことにします。

マメも頑張っているからと、これまでやっていた昼の仕事はやめて、スナックの黒服として夜の仕事をしながら耐え抜いています。

「俺」は工場勤務の男

そしてもう1人の主人公の俺は、工場に勤めながら、人生を淡々とやり過ごしているような人間です。アパートも服もボロそうだし、ご飯も決まったものしか食べない。なんでこんな人生になっちゃったの?というほど達観した、平坦な暮らしをつらぬく男です。

最後の急展開に引き込まれるのがお楽しみ

この2人、全然関係ない2人かと思いきや、最後はまさかまさかの展開でびっくりしました!大阪はお節介で、人の距離も近くて、温度感が全然違くて新鮮でした。

ちょっと汚くて貧しい感じがしたのは、地域がらなのでしょうか?まだ日本にもこういうエリアがあるのかと思うと、異世界の外国を覗いているような気持ちになりました。

通天閣の魅力・感想

通天閣を読んだ感想と魅力をまとめると、以下の2つ。

①ゴリゴリの大阪を感じる
②西加奈子ワールドに圧倒される

それぞれについて解説します。

①ゴリゴリの大阪を感じる

ゴリゴリの大阪を感じざるを得ない!というのが1番の感想でした。実はこちらの本は、知り合いの人に教えったもので「音読をしてみてください」とおすすめされました。

ちょっとは東京から西側に住んでもう9年になるので、ちょっとは大阪弁も話せるようになっていたかと思いきや…!本当に笑えてくるほど、わたしのエセ関西弁はひどすぎました!自分でも読み続けられない。

というか、発音がわからない。関西弁ってとっても難しいのは今も昔も変わりませんでした。「大阪をなめてもらったらこまんで!」と言われているようでした。

②西加奈子ワールドに圧倒される

そして2つ目の魅力は、西加奈子ワールドに圧倒されるということ。正直、何が何だかわからない、西加奈子ワールドと大阪という世界に圧倒された時間でした。

今度は大阪を知りたいと思ったときに、もう一度、じっくりと読みたいと思います。その時はきっと、うまく読めるはず。大阪の人、大阪が興味ある人はきっと面白い本です。

通天閣のまとめ

通天閣は大阪の魅力、そして西加奈子さんの世界観がたっぷり詰まった1冊です。これを読んで大阪にいきましたが、西成地区が「ここかー!!」という考え深い地区になりました。

大阪好きな人、憧れのある人にたまらない小説になるはずです。

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