クリスマスに読みたくなる「羊男のクリスマス」【今日のセレクト本vol.40】

クリスマスの時期が近づくと読みたくなるのが「羊男のクリスマス」です。1989年に村上春樹さん文・佐々木マキさん・絵で、講談社から出版されています。設定が不思議世界なのですが、最後には心がほっこり温まるような物語。癒されたい人、ちょっと不思議な本を読みたい人、村上春樹さん好きな人も読みいやすい絵本です。バレないあらすじや羊男(ひつじおとこ)とはをまとめました。

「羊男のクリスマス」のあらすじ

ドーナツ屋さんで働く羊男は、音楽の才能があるということで、聖羊上人様をお慰めするためのクリスマスソングを作曲するように依頼されます。それなのに、ちっとも作曲が進まない!アパートの大家さんに注意されてピアノが弾けないからです。そこで羊博士から、昨年のクリスマスイブに、穴のあいたドーナツを食べた呪いだということを知ります。そこで、呪いを解くために秘密の穴に降りていく・・・という物語。

羊男とは

羊男はイラストから分かるように羊の形をした生き物。羊なのか、人間なのかはわかりません。とくに羊男である意味は説明されていないので、解釈は人それぞれで大丈夫でしょう。一生懸命なのでついつい応援したくなります。ちなみにこの羊男、同じ村上春樹さん文・佐々木マキさん絵の「ふしぎな図書館」にも出てきます。

 

キャラクターはなんだか違うような気がするのですが、見た目は同じ。そして「ダンスダンスダンス」という小説にも羊男が出てくるようです。

羊男のクリスマスの魅力

羊男のクリスマスの魅力は以下の3つ。

①大人になると忘れてしまうファンタジーな世界
②ドーナツが食べたくて仕方がなくなる
③クリスマスにプレゼントしたくなる本

摩訶不思議な世界に引き込まれてしまいました。それぞれについて詳しくご紹介します。

①大人になると忘れているファンタジーな世界

まず羊男という設定も謎、落ちていく穴で出会う人(?)たちも謎でした。こういうファンタジーって大人になるとどうも忘れてしまいがちです。頭をもっと柔らかく、想像力豊かにしていきたいものだと感じました。セリフもいちいち考えさせられるし、そして村上春樹さんの世界観がとにかく広いので、ちょっと騙されたり、がっかりしたり、羊男と一緒に冒険するような気持ちになりました。

②ドーナツが食べたくて仕方がなくなる

ドーナツって普段食べないのですが、ドーナツがやたらと出てくるのでドーナツを食べたくなりました。読んだ人は思わず共感しちゃうと思いますが、中でもシナモンドーナツと、ねじりドーナツは外せません!本と一緒に食べ物も食べたくなる話って個人的にすごく思い出に残る気がします。

③クリスマスにプレゼントしたい本に決定!

こちらの本はクリスマスになるとよくインスタグラムにpostされているのを見ます。今回読んでその理由がよくわかりました!まずかわいい。そして、子供から大人まで楽しめるような本になっています。子供ができたらプレゼントしたいし、大人同士のクリスマスプレゼント交換にもこの本をプレゼントしたらオシャレだなと思いました!うん、ぜひ今年のクリスマスにはそうしよう!

何度でも読みたくなる楽しい本

ドーナツを買いたくなるのはもちろん、思い出も一緒に積み重ねていきたくなるような気持ちになりました。子供が生まれたら読み聞かせる、とか、大人になっていく自分の思い出とともに積み重ねていく、とか。

ドーナツと一緒に、この本をクリスマスには楽しみたいと思います。また素敵な本を紹介しますので、お楽しみに♡

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小鳥「リボン」の愛がつまった本、つばさのおくりもの【今日のセレクト本vol.57】

動物の温かさを感じられる本が読みたいときにおすすめなのが、小川糸さんの「つばさのおくりもの」です。ペットをもっと大切にしたいと心が温かくなるのと同時に、愛情をもっと感じられます。動物好きな人、心温まるお話を読みたい人はグッとくること間違いなし。ネタバレしないあらすじや見所をご紹介します。

「つばさのおくりもの」のあらすじ

『つばさのおくりもの』はオカメインコの「ぼく」の半生の物語。黄色い羽の、ほっぺのまるい印が目印のかわいい小鳥です。「ぼく」は、鳥たちの保護施設で出会ったヨウムのヤエさんからたくさんのことを教わります。

そして、新しい家族の元へと迎えられ、ママさんから「お帰りなさい」を言えるようにと言葉を教えてもらいます。そうして生活していくうちに、出会いと別れもありますが、「心の中では忘れなかった記憶=故郷と自分の名前」について気づいていきます。こちらの「ぼく」は、小川糸さんの『リボン』という小説の主人公、リボン目線の物語になっています。

リボンから見た世界は一生懸命

インコのリボン目線から見た世界は、生きるのに一生懸命で、周りのみんなが大好きのようでした。周りの人を大切にして、感謝して、何かに答えようと必死に頑張る。「無性の愛」ってこのことだなぁと、動物がますます好きになります。魅力は動物たちです。

魅力①裏表のないまっすぐな動物たち

「ぼく」は、昔の記憶はあまり残っていなくて、どんどん新しい記憶に書き換えられていきます。でも、胸の中に残っている温かい気持ちを大事。そして、新しい家族のことも大好きになろうと必死なのでした。

動物ってそうやって目の前のことに一生懸命で、人間に潜みがちな裏表の感情を抜きで生きています。翻って、わたしたち人間はなんて損得勘定に溢れているんだろう・・・とちょっと反省もしてしまいました。

魅力②愛犬に照らし合わせてホロリとしそうになる

そして、リボンの一生懸命さをみていると、ふと自分のペットにも重ねてしまうのでした。私は犬を飼っていますが、こんな風に、大好きで、温かい気持ちを抱いてくれて、安心してくれていたら嬉しいなあ!と思ってしまいました。もっと幸せにしなくちゃ!と改めて気づくことができたし、大切にしたい気持ちがまた生まれました。思わずペットに重ねてしまう瞬間がきっとあると思います。

「つばさのおくりもの」を10倍楽しむコツ

「つばさのおくりもの」を10倍楽しむコツは、ズバリ「リボン」を読むことです!「リボン」はリボンを巡る人間視点のお話。

「リボン」を読んでいると、この背景で人間がどういう状態で関わっていたのかということを知っているので、切ない気持ちも、リボンの健気さもとっても伝わってきます。

「つばさのおくりもの」は動物愛をもっと深められる

ぼくの世界はとっても繊細で、一生懸命で、守ってあげたくなってしまうほど、命というものを感じられました。小さい子に読んであげても素敵だし、大人がじっくりと味わうにも素敵な作品。

動物が大好き、健気で一生懸命な姿をみたい、温かい気持ちになりたい人にぴったりな作品です。親子、家族、仲の良い友人と共有するのも素敵ですね。

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男女差別を学べる絵本「問題だらけの女性たち」【今日のセレクト本vol.48】

今の暮らしが「当たり前」だということに慣れてしまうと忘れがちな、歴史の問題。今回はつい200年前までされていた「男女差別」について、皮肉たっぷりに描かれた絵本をご紹介します。とても読みやすくて、それでいてジェンダー問題について考えさせられる作品、ジャッキー・フレミングさんの「問題だらけの女性たち」です。教科書や学校の教材になったら良いのにというほど、勉強になりました。

「問題だらけの女性たち」のストーリー

「問題だらけの女性たち」は、19世紀の女性たちが受けていた男女差別を描いたイギリス発の大人のジェンダー絵本です。もともと英語で描かれていて、ユーモアと皮肉がたっぷりで読みやすいことが魅力。1ページ目から度肝を抜くような内容から始まります。

歴史から女性が排除されていた時代とは?

問題だらけの女性たちを読むと、歴史から女性が排除されていたことがよくわかります。

かつて世界には女性が存在していませんでした。だから歴史の授業で女性の偉人について習わないのです。男性は存在し、その多くが天才でした。

女性ってこんな生き物だっけ?という特徴がたくさんのっています。当時の女性に対する認識について、もう少し抜粋してみましょう。たとえば以下のとおりです。

頭がとても小さかったので、刺繍とクロッケー以外のことはなんにもうまくできませんでした

頭が小さくて、貧弱で、何もできない女性たちは、「家庭の玉」の中で生きていく事になります。「家庭の玉」では育児や洗濯、掃除など、大して大変じゃない仕事が主な業務。当時の女性たちの刺繍には、「HELP ME(助けて)」や「so so bored(めちゃくちゃ退屈)」などのメッセージも残されています。

当時の女性は精神薄弱だったので、教育を必要としませんでした。女性の脳は小さいだけでなく、柔らかい、スポンジのような軽い素材でできていました。娘たちは刺繍のステッチを60種類覚えてしまうと、もうそれで脳みそがパンパンになってしまいました。

ものを考えることは出産の妨げになる

女性はたいてい集中力に欠ける

ということで勉強もさせてもらえない状態でした。あの有名なルソーやダーウィンでさえ、女性に差別的でした!たった200年前まで、こんな女性差別が当たり前、迷信や固定観念が当たり前の世界だったようです。今考えるとあまりにもひどい女性差別ですが、当時は当たり前だったと思うと悔しさがこみ上げます。

歴史を振り返ることは、今の時代に感謝できること

いくらユーモアや風刺の内容だとわかっていても、女性のわたしとしては少し腹立たしい世界に感じてしまいました。女性があまりにも蔑まれていて、惨めな状況におかれすぎています。

ダーウィンですら女性差別をしていた

あの天才ダーウィンですら、女性のことをこんな風に語ったようです。

著名な男性と著名な女性のリストをくらえてみれば、男性が全てにおいて優れていることは明白

でもそれはそのはず!だって勉強すらさせてもらえない状況に女性が追い詰められているんだから。たった200年前までこんな状態だったなんて信じられませんでした。しかも、先進国のオシャレ代表な街イギリスで。アフリカの女性差別が少し前に話題になりましたが、イギリスだって少し前までこんなに女性差別が行われていたとは知りませんでした。

日本や現代社会と比較すると、幸せ感度がグンと上がる

欧米は、日本よりも男女平等の世界だと思っていたけれど、日本の方がまだよかったのかもしれないと思ってしまいました。紫式部だって文字を書いて作品を残せているし、大奥だって女性の世界として華やかに成り立っていました。今の世の中だって、「男女平等社会」とか「ダイバーシティ」とか、男女平等を唱えているけれど昔に比べたらまだマシなんだなと思うことができました。

 

子供が生まれたら、女性の負担が大きくなるとはいえ、まだ昔よりは活躍の場もたくさんある現代。女性だって社会の一員として働いていて、むしろ「女性が活躍している」ということが社会的にステータスになる時代になってきました。きっと、当時の女性たちからしたら、うらやましくて仕方がないチャンスに溢れている。歴史を振り返ることは、今の自分が幸せだと思えるし、未来に向けての希望も持てるから改めて大切だなと思いました。

「問題だらかの女性たち」で歴史を知ると未来が楽しみになる

19世紀からこの200年で大きくジェンダー問題が変化してくることがわかる絵本でした。教科書にしてもらいたいくらい、ジェンダー問題について真正面から向き合える本。きっとこの先200年で、さらに未来は変わっていくでしょう。その未来に向けてわたしもビジョンを持っていきたいと思う。そんな決意ができました。また面白い本をご紹介していきますので、お楽しみに。

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