鎌倉の代筆屋が舞台の「ツバキ文具店」【今日のセレクト本vol.41】

鎌倉を舞台にした代筆屋の小説が「ツバキ文具店」。2016年4月に幻冬社から発売されて、2017年本屋大賞第4位、2017年4月にはラジオドラマ、NHK総合ドラマ「ツバキ文具店〜鎌倉代筆屋物語」にもなった話題作です。

こちらの記事では、原作の小川糸さんの「ツバキ文具店」をご紹介します。本のあらすじや魅力・感想、続編の情報もまとめました。手紙好きな人、小川糸さん好きな人にたまらない一冊です。

「ツバキ文具店」のあらすじ

「ツバキ文具店」は、鎌倉で代々続く代筆屋をモデルにした小説です。先代から受け継いだ11代目のポッポちゃん(鳩子)は、代筆屋として年賀状の宛名書きから離婚の報告、絶縁状までたくさんのお手紙をしたためます。

お隣のバーバラ夫人、仲良しのパンティー、QPちゃん、男爵などチャーミングな登場人物たちがたくさん出てきてにぎやかです。春夏秋冬の1年を通じてツバキ文具店のポッポちゃんを中心に、鎌倉の四季を感じることができます。

「ツバキ文具店」の魅力・感想

「ツバキ文具店」の魅力は以下の2つ!

①手紙の奥深さを感じられる
②幸せになれるおまじないが素敵

詳しく解説していきます。

①手紙の奥深さを感じられる

本の中では実際の直筆のお手紙も出てきます。「なるほど」と思わず見入ってしまうほど美しく、書く相手や内容によって、字体や紙質、ペンまで変えているんです。

手紙好きのわたしは「なんだ、ただのズブの素人だった!」と思ってしまうほどの、手紙への知識やお作法はたくさんありました。絶縁状には切れない羊皮紙を、金を貸せないと思わせたい相手には切手も料金より多く貼るなど、ポッポちゃんの相手や手紙の意図を考えて出す手紙はとっても印象的でした。

②幸せになれるおまじないが素敵

そして幸せになれるおまじないが出てくるのですが、とても素敵でした。「幸せになれる秘密のおまじない」としてお隣のバーバラ婦人がポッポちゃんに教えてくれます。

あのね、心の中で、キラキラ、って言うの。

わたしも「キラキラ」と心の中で唱えながら青空を見てみたら、とっても簡単な言葉なのに世界がきらめいて見えました!小川糸さんのこういう丁寧で、ちょっとした空気を変えるような言葉の選び方が好きです。

「ツバキ文具店」のまとめ

「ツバキ文具店」は小説の中身も素晴らしいですが、装丁もとても綺麗なのでじっくり見て欲しいです。実際の手紙の文章は、文字の書体も書き方も異なるので、手紙の真髄が伝わってきます。

「ツバキ文具店」の続編

ツバキ文具店は続編も出ているので、最後に簡単にご紹介します。

キラキラ共和国

キラキラ共和国は、ツバキ文具店の続きのお話。その後のポッポちゃんとQPちゃんたちのお話が綴られています。いきなり話が進んでいたのでびっくりしたけれど、相変わらずとても良い話だったのでお気に入りのシリーズです。

 

ツバキ文具店の鎌倉案内

「ツバキ文具店の鎌倉案内」は、「キラキラ共和国」が出版される前に発売されたツバキ文具店の店主・鳩子のエッセイです。初デートで行ったカレー屋さんや、男爵がご馳走してくれたうなぎなど、ツバキ文具店をまた違った角度から楽しめます。

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ドラマ「つるかめ助産院」の原作小説【今日のセレクト本vol.33】

NHKドラマ「つるかめ助産院」の原作小説は、ほっこり温かい気持ちになれます。十月十日の神秘や、両親への感謝の気持ちが込み上げてくる物語。

こちらの記事では、集英社文庫から出版されている小川糸さんの「つるかめ助産院」をピックアップしました。ネタバレしないあらすじ、魅力・感想、ドラマのキャストをご紹介します。

「つるかめ助産院」のネタバレなしのあらすじ

 

「つるかめ助産院」は夫が失踪した、まりあの物語です。夫の小野寺君が理由なくいきなり消えてしまい、失意のどん底のまりあが、2人で旅行したことのある南の島に、1人で訪れます。

フラフラと歩いていたらつるかめ助産院のつるかめ先生に話しかけられ、その出会いがきっかけで、トントン拍子でまりあも助産院で暮らすことに。なんと、小野寺君との子どもを妊娠していることも知ります!

助産院にはベトナム人のパクチー嬢、エミリー、旅人サミー、長老などあったかい人たちが関わっていて、みんなのおかげでまりあは大切なものに気づいていきます。傷ついていたまりあの心がどんどん溶けていく物語です。

「つるかめ助産院」の魅力・感想

「つるかめ助産院」の魅力は、以下の3つ。

①十月十日の愛しい時間が感じられる
②妊娠期間を想像できる
③親孝行したくなる

詳しくみていきましょう。

①十月十日の愛しい時間が感じられる

全部読み終わってとってもほっこりとした気分になりました。お腹の赤ちゃんを10ヶ月かけて一緒に育てているような、優しい気持ちです。

本の中では妊婦さんのことを「子どもを育む人」と言っているのですが、なんて素敵な言葉なのでしょうか!妊娠期間と出産は、危険も伴うし、生と死が隣り合わせ。お母さんたちの強い気持ちがとても伝わってきました。

私もこんな風にお母さんに思われながら、守られ、愛され生まれたんだなという気持ちが芽生えました。ちなみにたくさんのことを教えてくれるつるかめ先生は、モデルになった助産師さんがいるそうです。

②妊娠期間を想像できる

妊娠したことのない私は「つわりや不便が多くて大変だ」というイメージしかなかったのですが、どうやら違うみたい。赤ちゃんとへその緒で繋がっていて、四六時中一緒にいられるのは妊娠期間だけのようなんですね。

私も愛犬ココとずっと一緒にいられたらと考えたら、こんなに可愛い子と一緒にいられる時間は1秒足りとも無駄にしたくないと思ってしまいそうです。妊娠することは、キャリアが止まってしまうことへの恐怖感しか持てなかった私だけど、変われるかもって思えました。

③親孝行したくなる

まりあも、他のお母さんたちも、みんな必死に赤ちゃんを愛して守って、育てています。私のお母さんもこんな気持ちでいてくれたのかなと思うと、感謝したい気持ちに溢れました!実は想像していた物語と全然違っていて、「読んでおけばよかった」と思った本になりました。

「つるかめ助産院」ドラマのキャスト

ちなみにNHKドラマのキャストも、少しご紹介していきます。

● 小野寺(安西)まりあ:仲里依紗
● 鶴田亀子:余貴美子
● 小野寺達也:溝端淳平
● 小野原タエ(おばぁ):平良とみ
● 天城里見(サミー):中尾明慶

仲里依紗ちゃんと中尾明慶さんが急接近したのもこのドラマ。第2話では有村架純さんが出産するシーンもあります。ドラマは見ていないけれど、最終回には泣いちゃうんだろうな。DVDも出ているので、ご興味ある方は是非。

「つるかめ助産院」のまとめ

つるかめ助産院は、親からの愛情を感じられて、感謝の気持ちを伝えたい!という前向きな決心を持たせてくれる小説でした。これから妊娠・出産を控えている女性や、温かい気持ちになれる小説を探している人におすすめです。

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「卵を買いに」ラトビアに恋した小川糸さんのエッセイ【今日のセレクト本vol.23】

作家の小川糸さんが毎年出版するエッセイは、海外生活や日本での丁寧な暮らしが詰まった魅力あふれるエッセイです。こんな生活したいなと思わず憧れてしまう人も多いはず♡

こちらの記事では、幻冬舎文庫出版の小川糸さんの「卵を買いに」をピックアップしました。内容や本の魅力、感想をご紹介します。

「卵を買いに」の内容

「卵を買いに」は糸さんが毎年出している日記エッセイです。毎年タイトルが違いますが、絵のテイストが似ているのですぐに「あ!今年も出てる!」とわかります。

1月から始まり、12月の年末を迎えるまでの日々が日記のようにまとめられています。1ヶ月に4〜5本くらいのペースで書かれているので、糸さんの仕事の流れや、スケジュール感、そしてこんな国に行っているんだということがわかるんです。

作家さんなのですが、いろいろな国に旅をしています。取材の旅もありますが、夏は避暑を兼ねてベルリンとか。なんともゴージャスかと思いきや、地に足をついた暮らしをされているので、慎ましくて丁寧で憧れてしまいます。

「卵を買いに」の内容の魅力・感想

「卵を買いに」の魅力は以下の2つ。

①ラトビアに恋してしまう
②愛犬「ゆりね」がかわいすぎる

ラトビアのことも知れるし、とくにゆりねがかわいすぎて、胸キュンものです。

①ラトビアに恋してしまう

今回の目玉はラトビア!糸さんは取材で訪れていますが、その歴史的背景に私も驚きました。ソ連占領下にあったとき、ラトビアの人々は伝統衣装も踊りも、国の歌を歌うことすら禁止されていました。

そこで彼らは独立を目指すのですが、その方法が素晴らしいんです。武器を持つのではなく、「歌を歌う」ことで革命を起こし独立を果たします!そして今、伝統的な衣装を着てダンスができることに誇りを持っていてキラキラしているんです。

ちょうど糸さんが訪れたのが5年に1度行われる「歌と踊りの祭典」。地方からラトビアの首都リガに集まった子供達が、それぞれの伝統衣装を着て歌い踊ります。選ばれた1万5千人がステージに立ち、7万人の観客たちが見守る。ソ連からの迫害にも耐え、守ってきた自分たちの伝統が一気に解放される祭典。

考えただけで胸にこみ上げてきます。ラトビアといえばバルト三国の一国ということしか知らなかったけれど、こんな背景があって、自分たちの国に高い誇りを持っているとはしりませんでした。

振り返れば、私自身も日本文化は好きだけど、それを自分が発信して行こうとか、伝統を守るために学ぶということを自主的に行っていない。国を上げて、ラトビアの人々は自国の誇りと伝統を守ろうとしている姿がとても美しく思いました。「歌と踊りの祭典」をぜひ訪れてみたくなりました。

ちなみにこの取材を元に描かれたのが「ミトン」という小説。涙ありの美しい小説です。

愛犬「ゆりね」がかわいすぎる

そしてもう1つ注目はゆりねの成長です。糸さんの愛犬は、表紙にも描かれている白いもふもふのワンコでその名も「ゆりね」。ちょっとずつ大きくなっていく姿や、糸さんがかわいがっていることが伝わってきて会ってもいないのに愛しくなってしまいます。

近所の仲良し犬との交流なんかも描かれていて、なかなか仲良しのわんこ仲間がいない私は影ながら憧れてしまいます。しかもちょうど私は愛犬ココをお留守番させて実家に帰省していた最中。とても会いたくなってしまいました。

「卵を買いに」のまとめ

今回もフィンランド、ベルリン、そして北海道のニセコなど様々な国や地域に赴いている糸さん。でも1番はラトビアでした。なかなか旅したことがない方も多いと思うので、空気感が新鮮に映るはず。味わってみてくださいね。

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小鳥「リボン」の愛がつまった本、つばさのおくりもの【今日のセレクト本vol.57】

動物の温かさを感じられる本が読みたいときにおすすめなのが、小川糸さんの「つばさのおくりもの」です。ペットをもっと大切にしたいと心が温かくなるのと同時に、愛情をもっと感じられます。動物好きな人、心温まるお話を読みたい人はグッとくること間違いなし。ネタバレしないあらすじや見所をご紹介します。

「つばさのおくりもの」のあらすじ

『つばさのおくりもの』はオカメインコの「ぼく」の半生の物語。黄色い羽の、ほっぺのまるい印が目印のかわいい小鳥です。「ぼく」は、鳥たちの保護施設で出会ったヨウムのヤエさんからたくさんのことを教わります。

そして、新しい家族の元へと迎えられ、ママさんから「お帰りなさい」を言えるようにと言葉を教えてもらいます。そうして生活していくうちに、出会いと別れもありますが、「心の中では忘れなかった記憶=故郷と自分の名前」について気づいていきます。こちらの「ぼく」は、小川糸さんの『リボン』という小説の主人公、リボン目線の物語になっています。

リボンから見た世界は一生懸命

インコのリボン目線から見た世界は、生きるのに一生懸命で、周りのみんなが大好きのようでした。周りの人を大切にして、感謝して、何かに答えようと必死に頑張る。「無性の愛」ってこのことだなぁと、動物がますます好きになります。魅力は動物たちです。

魅力①裏表のないまっすぐな動物たち

「ぼく」は、昔の記憶はあまり残っていなくて、どんどん新しい記憶に書き換えられていきます。でも、胸の中に残っている温かい気持ちを大事。そして、新しい家族のことも大好きになろうと必死なのでした。

動物ってそうやって目の前のことに一生懸命で、人間に潜みがちな裏表の感情を抜きで生きています。翻って、わたしたち人間はなんて損得勘定に溢れているんだろう・・・とちょっと反省もしてしまいました。

魅力②愛犬に照らし合わせてホロリとしそうになる

そして、リボンの一生懸命さをみていると、ふと自分のペットにも重ねてしまうのでした。私は犬を飼っていますが、こんな風に、大好きで、温かい気持ちを抱いてくれて、安心してくれていたら嬉しいなあ!と思ってしまいました。もっと幸せにしなくちゃ!と改めて気づくことができたし、大切にしたい気持ちがまた生まれました。思わずペットに重ねてしまう瞬間がきっとあると思います。

「つばさのおくりもの」を10倍楽しむコツ

「つばさのおくりもの」を10倍楽しむコツは、ズバリ「リボン」を読むことです!「リボン」はリボンを巡る人間視点のお話。

「リボン」を読んでいると、この背景で人間がどういう状態で関わっていたのかということを知っているので、切ない気持ちも、リボンの健気さもとっても伝わってきます。

「つばさのおくりもの」は動物愛をもっと深められる

ぼくの世界はとっても繊細で、一生懸命で、守ってあげたくなってしまうほど、命というものを感じられました。小さい子に読んであげても素敵だし、大人がじっくりと味わうにも素敵な作品。

動物が大好き、健気で一生懸命な姿をみたい、温かい気持ちになりたい人にぴったりな作品です。親子、家族、仲の良い友人と共有するのも素敵ですね。

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