夜の魅力を味わうエッセイ。角田光代さん「幾千の夜、昨日の月」【今日の本vol.1】
寝る前の読書にぴったりな本を探している人におすすめしたいのが、今回ご紹介する角田光代さんの「幾千の夜、昨日の月」です。夜の魅力を味わいたくなるエッセイ。
こちらの記事では、角田光代さんの「幾千の夜、昨日の月」をピックアップしました。内容や感想、魅力をご紹介します。
今日のセレクト本とは?
今回から始まったこちらのコーナーでは、年間150冊近く読書をする管理人が、おすすめ本をご紹介するコーナーです。一冊ごとにピックアップして内容や魅力をお伝えします。
幾千の夜、昨日の月の内容
幾千の夜、昨日の月は、角川書店出版の角田光代さんのエッセイ。角川文庫から文庫本サイズも出ています。BOOKデータベースによると、本書の中身はこんな感じです。
初めて足を踏み入れた異国の日暮れ、夢中で友と語り明かした夏の林間学校、終電後ひと目逢いたくて飛ばすタクシー、消灯後の母の病室…夜という時間は、私たちに気づかせる。自分が何も持っていなくて、ひとりぼっちであることを―。記憶のなかにぽつんと灯る忘れがたいひとときを描いた名エッセイ。
とにかく夜について、考えさせられる、だけど自分の過去の温かな気持ちを思い出させてくれるほっこりするようなエッセイです。
幾千の夜、昨日の月の感想・魅力
ここからは、「幾千の夜、昨日の月」の感想をご紹介します。魅力ポイントは以下の3つ。
①子どものころの夜を思い出す
②旅先で出会う異国の夜
③寂しくなった孤独の夜
詳しく解説していきます!」
①子どものころの夜を思い出す
子供の頃の角田さんにとって、夜は存在しませんでした。暗闇でしかなく、外にも行かずに家にいたからというのは納得。子供ながらの感覚だなと感じます。そんな感覚を大事に覚えておけるのもすごいなと思ってしまいます。
一方私は習い事が夜遅くにあったので、夜は出歩くものでした。もちろん危ないと言われていたので、終われば真っ直ぐに家に帰ります。それでも大人しかいない夜の街を歩くこと、大人に混じってバスを待つこと、キャバクラの呼び込みのボーイの横を足早に通り過ぎることなど。
小学生の私にはとても新鮮で、なぜだか誇らしいものでした。そんな感覚を思い出させてくれました。
②旅先で出会う異国の夜
魅力の2つ目は、旅先で出会う異国の夜です。旅先で出会う異国の夜たち、走る豪華ホテルと呼ばれているオリエント・エクスプレスで過ごす最高の夜行列車など。一人旅で夜が怖く感じるというのはすごく共感してしまいます。
なかなかのインパクトがあったのが「地獄列車」の話。ミャンマーで乗った夜行列では、車窓から入ってくる虫と、足元を駆け抜けるネズミに耐える「地獄列車」だったそうです。ふと私もインドの「ゴキブリ列車」を思い出しました。
枕、ブランケット、壁、床などいたるところにゴキブリがうじゃうじゃ。夏だったのですが、暑いのを我慢してバックパックから長いパンツ、靴下、パーカーを着込みガードをしました。それでも肌の露出が嫌だったのでパーカーを上まで閉めて、フードを被り、紐をキュッと閉めて出ているのは目だけというファッションを貫きました。
「あの子、なんて格好してるんだよ!」(と言っているように聞こえる)と周りのインドのおじちゃん達に笑われながら12時間以上、過ごしました。そうです、案の定ろくに眠れずに過ごしました。またその夜に戻りたいわけではないけれど、懐かしい思い出が蘇ってちょっとほっこりしました。
③寂しくなった孤独の夜
寂しい夜は誰にでもありますよね。角田さんも例外ではありません。オールしてしまうほどの体力があった頃や、無性に誰かと話したくなって電話したころ、私にもあったなと思い出してしまいました。
私は角田さんは大人しくて芯の強い女性、というイメージだったのですが、ちょっと意外な一面を見られた気がしました。エッセイの醍醐味ですよね。
幾千の夜、昨日の月のまとめ
きっと誰にでもある「夜」の時間。その感覚や過ごし方は人それぞれだけれど、昔感じたことやふと不思議に思っていたことはきっと誰の胸の中にも眠っているはずです。
そんな感覚をそっと思い出させてくれるような時間を味わえます。夜の読書にぜひどうぞ。