柚木麻子さんデビュー作!青春を思い出す終点のあの子【今日のセレクト本vol.37】
社会に揉まれて、鈍感力を身につけたアラサー女子におすすめなのが、純粋で繊細で、みずみずしく色々なことを感じられる女子高生の物語です。
こちらの記事では、柚木麻子さんの「終点のあの子」をピックアップしました。ネタバレしないあらすじ、読書感想文や魅力をご紹介します。
終点のあの子 のあらすじ
「終点のあの子」は、世田谷にあるプロテスタント系女子校が舞台の小説です。登場人物は、パパがカメラマンで奔放な朱里、内部生上がりの希代子、垢抜けない森ちゃん、クラスの中心人物恭子など、たくさんの女の子たちが出てきます。
お嬢様高校なので、本物のお金持ちから、ちょっと頑張って入学している子も。うまく家の事情を話せなかったり、プライドから隠そうとしていたり、脇役でもキャラが濃くしっかりしていて、みんな実在しているみたいにリアルな世界です。
4つのストーリー
収録作品は以下の4つ。
● フォーゲットミー、ノットブルー
● 甘夏
● ふたりでいるのに無言で読書
● オイスターベイビー
こちらの4つのストーリーの中で、主人公が移り変わります。同じ出来事も、見る人によって違うことがわかって面白さも倍増です。
オール讀物新人賞受賞
ちなみに柚木麻子さんのデビュー作品ですが、繊細な描写が各雑誌で絶賛されてオール讀物新人賞を受賞しています。
終点のあの子の読書感想文・魅力
終点のあの子を読んだ感想や魅力をまとめると、以下の3つ。
①渇いた三十路の心が潤う♡
②学生時代の忘れている記憶を思い出す
③地名が出てきて面白い
それぞれについて見ていきましょう。
①渇いた三十路の心が潤う♡
1つ目は、渇いた三十路の心が潤うこと。(笑)大人になることは、女子高生の気持ちを忘れてしまうことだと改めて感じてしまいました。
友達の些細な言葉を細かいところまで気にしてしまうし、過剰なまでに反応してしまうなど、子どもっぽいという言葉で片付けることもできるけど、そういう純粋な反応ができることのみずみずしさを感じてしまいました。
今じゃ誰とお弁当を食べようが関係ないし、むしろ一人で食べたほうがリラックスできる自分がいる。だけど高校生のときって、誰とグループを組むかもとっても重要だったなと思い出してしまいます。まさに感受性を久しぶりに高めてくれました。
②学生時代の忘れている記憶を思い出す
そして2つ目は、学生時代の忘れた記憶を思い出したこと。この女子高は、各駅停車しか停まらない駅にあります。それなのに奔放な朱里は、急行電車に飛び乗って江ノ島に行きます。サボるために急行に乗るシーンは鮮やかで印象的!
それでふと、わたしもよく急行に乗って、そのまま江ノ島に行ってたなぁと学生時代を思い出しました。わたしの場合は大学時代だったけれど海を見たくなって江ノ島に行っていました。行ったはいいけれど、お金がなくて改札から出られないなんてこともありました。そんな忘れかけてた記憶を思い出す瞬間って気持ちが優しくなれます。
③地名が出てきて面白い
最後は地名が出てきて面白いこと。たとえば、東急東横線だからお金持ち、京急線に乗っているからダサいなど地域がらも出てきます。
そして、小田急線沿いの高校というストーリーということもわたしのハッピーメーターを引き上げてくれました!町田、小田急線、菊名など地元の地名がわんさか出てきて嬉しかったです。小田急線沿いで育ったから地元の名前がたくさん出てきて、もうほっこり。
離れているからこそ、小説で地元が出てきてとても身近に感じてしまうことって私だけではないはず。東京出身の人は、面白く読めるはずです。
感受性を高める小説はやっぱり良い
終点のあの子は、感受性を高めてくれる小説でした。昔はもっと人のことを気にしていたなど、手放してもいい感情と、失った感情に気づくことができたことは大収穫。みずみずしい世界観を楽しんでみてくださいね。